当事者研究ワークシート(べてるの家HPより一部加筆)

 

 

 〜自分の苦労の主人公になる5つのステップ

 

     ❶〈問題〉と人を切り離す

 

「爆発を繰り返してる○○さん」という視点から、「爆発をどうにかやめたいと思っているのに やめられない苦労を抱えている○○さん」という視点/理解を持つ。

爆発=自分から爆発➡止めたいけど止められないと苦悩する自分へ

 

    ❷自己病名をつける

 

医者の診断名に囚われず、自分の抱えている苦労や症状の意味を反映した、自分がもっとも納得できる「病名」を自分でつける。例:「統合失調症悪魔型」、「人間アレルギー」など。

 

    ❸苦労のパターン・プロセス・構造の解明

 

症状の起こり方、行為、苦しい状況への陥り方には必ず規則性や反復の構造がある。それを仲間共に話し合いながら明らかにし、図式化、イラスト化、ロールプレイなどで視覚化する。


❹自分の守り方、助け方の具体的な方法を考え、場面をつくって練習する。

 

予測される苦労に対して、自己対処の方法を考え、練習する。自分を助ける主人公はあくまで「自分自身」。

 

❺結果の検証を記録し、実践してみる。

 

その結果をまた検証し、「良かったところ」と「さらに良くするところ」を仲間と共有し、次の研究と実践につなげる。研究の成果としてうまれたアイディアは、「当事者研究スキルバンク」に登録し、仲間に公開する。

 

 

 

当事者研究の理念(当事者研究200より引用)

 

1.「弱さ」の情報公開

• 当事者研究では、お互いの「弱さ」や「苦労」を持ち寄ることによって、人がつながり、その場に信頼と助け合いが生まれ、新たな知恵が創出さ れることを大切にしてきました。

• ですから、「弱さ」とは、大切な生活情報のひとつであり、みんなで分かち合うべき共有財産なのです。

 

2:「自分自身で、ともに」

• 当事者研究は、他者の評価を気にしたり、人に心配され、管理される暮らしではなく、かかえる苦労を大切なものと考え、「自分の苦労の主人公」になろうとするところから生まれたもので す。

• 当事者研究は、一人で行うのではなく、仲間と ともにテーマを共有し、対話を通じた試行錯誤を重ねながら自分らしい生き方、暮らし方をともに模索するところに特徴があり、「自分自身で、ともに」は、もっとも基本となる理念です。 

 

3:経験は宝

• 当事者研究では、どのような失敗や行き詰まりの体験でも、そこには未来につながる大切な資源(宝)と、今の苦労や困難を解消する知恵とアイディアの素材が眠っていると考えます。

• どんな体験でも、仲間と語り合い、分かち合い、 ともに研究することで有用な経験となります。

 

4:”治す”よりも”活かす”

• 隠し事をしたり、必要以上に頑張りすぎると体調が悪くなる人がいます。

• そんな時は、正直さと自分のペースを取り戻すことで回復することができます。

• そのように、当事者研究は、研究を通じて“苦労 (病気)に学び、活かす”ことを大切にしてきました。

• それは、苦労(病気)の中には、私たちを回復に向かわせようとする大切なメッセージがあり、「苦労 (病気)も回復を求めている」からです。

 

5: 「笑い」の力   ー ユーモアの大切さ

• 当事者研究という場には、不思議と笑いとユーモアが溢れています。

• 「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと」と言われるように、ユーモアには、苦しい現実から距離をとり、苦労に打ちひしがれないために人間に供えられた力であり、究極の“生きる勇気”だとも言われています。

 

6:いつでも、どこでも、いつまでも

• 当事者研究は時間や場所を選ばずに、“いつで も、どこでも、いつまでも”自分なりのやり方で自由自在に行うことができます。

• 困ったとき、行きづまりを感じたときばかりではな く、上手くいった時でも、ちょっと立ち止まってひと言「研究してみよう! 」と考える姿勢が研究を続ける大事なコツです。

 

7:自分の苦労をみんなの苦労に

• 当事者研究では、「自分の苦労をみんなの苦労に」「みんなの苦労を自分の苦労に」を合言葉にしています。

• 「自分だけだ」と思っていた苦労が、仲間と同じ苦労だと知った時、私たちは安心をします。

• また、みんながかかえている苦労を、ともに担うとき、そこに絆が生まれ、自分の苦労が人の役に立つ喜びを感じることができます。

• そのように、苦労は分かち合うことによって、新しい可能性を生むのです。

 

8・前向きな無力

• 当事者研究では、目の前の苦労に対しては、誰もが無力であり、先入観や常識にとらわれずに、 互いに知恵や情報を出し合いながら、「新しい自分の助け方や理解」を生み出すことを大切にしています。

• そのように、お互いの「前向きな無力さ」が研究活動を促進させ、新たな発見を生み出す原動力になります。

 

9:「見つめる」から「眺める」へ

・当事者研究では、自分を見つめるのではなく、研究の素材である自らの体験を、別なものに置き換えたり、苦労のデータを目の前のテーブルに広げるように出し合い、それを眺め、わいわいと対話をかさね合いながら、 苦労の起き方のパターンやその意味を自由自在に考えます。

・その作業を通じて、「とらわれていること」が「興味のあること」に、「悩み」が「課題」に、「孤立」が「連帯」へと変わっていきます。

 

10:言葉を変える、振る舞いを変える

• 当事者研究の場は、「言葉のジャズ」と言われるように、研究活動を通じて、自由自在に、言葉が行き交い、交わり、出会う中で、“新しい言葉 と自分の助け方(振る舞い)”が生まれます。

• “自分を語る言葉”と“振る舞い”が変わることで、 過去の体験や目の前の苦労が、意味のある大切な経験へと変わります。

 

11:研究は頭でしない、身体でする

• 「研究をする」というと、「頭を使う作業」という印象があります。

• しかし、当事者研究が大切にしてきたのは、 「頭」以上に「足」を使って行動し、「身体」を使っ て表現したり、さまざまな経験(実験)を重ねながら、人と出会い、場に立つことです。

• ストレッチをしたり、表情や姿勢を変えるだけで も物の見え方や感じ方が変わります。

 

12:自分を助ける、仲間を助ける

• 当事者研究では、リストカット、爆発などの苦労や、辛いと感じる症状も、何らかの圧迫や苦しさから自分を解放しようとする「自分の助け方」のひとつと考えます。

• しかし、そのような助け方の効果は一時的で、人間関係がこわれたり、自分自身が深く傷ついたりして後悔するという“副作用”があります。

• そこで、当事者研究では、対話を重ねながら、誰もが安心できる、より有効な「新しい自分の助け方」を仲間の力を借りていっしょに探ります。

• そして、そこから生まれたアイデアが、同じ困難をかかえ る仲間を助けるという「苦労の循環」がはじまります。

 

13・初心対等

• 当事者研究には、ベテランや初心者の分けへだてはありません。

• 当事者研究は、いままでの研究を活かしながらも、 いつも初心に立ち返り、仲間の大切な経験や発想 に学びながら進みます。

• そのように、一人ひとりのかかえる研究テーマの前 では、誰でも対等であり「自分の苦労の専門家」と して尊重されます。

 

14:主観・反転・“非”常識

• 当事者研究では、その人自身が見て、聴いて、感じている世界を尊重し、ありのままに理解することを大切にしています。

• そのためには、その人自身が生きる世界に降り立ち、わかちあい、苦労に寄りそいながら、新しい生き方のアイデアを一緒に模索することが大切になってきます。

• また、常識を反転(例:悩み方がうまい、いい苦労をしているね・・)させることで、苦労が実は大切な 意味や新しい可能性を持っていることが見えてきます。 

 

15:「人」と「こと(問題)」をわける

• 当事者研究では、「人と“こと-(問題)”」を分けて考えることを大切にしています。

• そのことによって、問題をかかえた人も、「問題な○○ さん」から「問題をかかえて苦労している○○さん」に 変わります。

• 「人と“こと-(問題)”」を分けて考えることで、研究がより促進され、人の評価から自由になることが可能となります。

• それは、人間の存在価値は、失敗や成功、問題の大 小によっては損なわれないと信じるからです。